Hyakuyo's Box

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降谷零と彼を巡る人々の心理学的分析・考察

自由への選択〜「灰原哀」という少女

「名探偵コナン」に灰原哀という少女が登場しなかったら、この物語はこれほどの深みを帯びなかったのではないか。そう思うことがあります。 それは哀ちゃんがその名の通り「哀しみ」を背負って作品に登場し、それを乗り越えて生きようとする姿を私たち読者が…

降谷零の孤独とは〜痛みと夢からの考察

2022年の映画に先駆けて、いよいよアニメ警察学校編の放映が始まりました。 22歳の降谷零(紛れもない降谷零!)が動いて喋って笑っているのを見られるだけで幸せなのですが、やはり29歳の降谷零を知ってから見るに、色々と思うところも出てくる次第…

赤井秀一が「敵に回したくない」と言った男〜降谷零のトラウマと情動脳

「君は、敵に回したくない男の1人なんでね」 来葉峠で鮮やかに復活した赤井秀一が、降谷零に言った言葉です。 赤井さんは降谷さんが自分を殺そうとしていることを知っています。にも関わらずそのことを責めることもなく、むしろ最上級の賛辞と言っていいよう…

【心理・所感】サバイバー〜「諸伏景光」という男

諸伏景光という人は、何と苛烈な人生を送った人だったのか… 少女だった真澄ちゃんに話しかける回想シーンなどから、優しく穏やかな「微笑みの人」というイメージがあったのですが、その下に途方もなく大きなものを抱えていたのだなあ、とWPS諸伏編を読み終え…

【所感】青春の影〜その瞬間、少年たちは大人になる

とにかくWPSの松田くんはかわいいな!と思います。やんちゃで直情的、愛想はないし無礼だけれども友達思いで憎めない。 その松田くんがサングラスで表情を隠し、喪服を着続けて爆弾犯を執拗に追い続ける男になることを、読者である私たちは知っています。市…

1歳のご挨拶

いつもお読みいただいている方々、ご愛顧ありがとうございます。 初めましての方は、初めまして。 今月で、当ブログは1歳になりました。 数か月で消すかもしれないなあと思っていたので、のんびりだらだら更新とはいえ1年も続いたことに自分でびっくりです…

【心理】「喪の作業」と降谷さん

景光さんの死と降谷さんの関わりについてはいつかきちんとまとめたいと思っていたのですが、どう考えてもひとつの記事ではまとまらないので少しずつ書いていきたいと思います。 今回は精神分析において「死」を考えるにあたり基本の1つとなっている、「喪の…

【心理・所感】世界への扉が開かれる〜降谷さんとエレーナさん

※本記事では10/16本誌掲載の『名探偵コナン警察学校編』について深く言及しています。未読の方はご注意ください。 降谷さんが警察官を目指した理由が明らかになりました…。いつか来るのだろうと思っていたことがあまりにもさらりと突然来てしまい、「やはり…

【心理・所感】桜と命と降谷零

※本記事では『ゼロの日常』について深く言及しています。未読の方はご注意ください。 本誌の最新エピソードで降谷さんと桜が描写されたことに心を打たれたのは私だけではないと思います。カラー表紙に続いて、今回が2度目ですね…。 なぜか降谷さんには桜が…

【心理】3人の「怖い男」~緋色組の研究

「僕には僕以上に怖い男が2人いるんだ」。これは「ゼロの執行人」での雨の日本橋における降谷さんの台詞ですが、今回はこの「怖い」という言葉がどういう意味を持つのかについて心理学的に考察します。 尚ご承知の方が多いと思うのですが、降谷さんの言う2…

【心理】トリプルフェイス~ドラマツルギーと「沈められた」降谷零

いつかきちんと分析したいと思っていたトリプルフェイスです。 まだ材料が揃っていないので精神分析的な視点からは難しいのですが、今週のアニメでとうとう降谷さんと赤井さんが顔を合わせるということで、現時点での「トリプルフェイス分析」を書いておきた…

【所感】ダークヒーローとしての降谷零

※今回の記事は心理学的考察ではなく、ただの「ゼロの執行人」からの所感です。 「コナン」が東映・小学館のドル箱であることは、私のようなライトなファンにあっても、「ゼロの執行人」前からの認識でした。ただ、「ゼロの執行人」の興行収入がこれほど急に…

【心理】「情報屋」降谷零

なんだかいつも降谷さんの弱い部分にスポットを当てているような気がするので、「降谷零がいかに有能か」についても考察してみたいと思います。 今回は、精神分析ではなく認知心理学の話になります。 認知心理学は専門ではないので、知識がぼんやりしている……

【心理】降谷さんと「死の欲動」

注:後半にて、コミック未収録分のネタバレをやや含みます! 「死の欲動」とは、心理学の原点にして頂点・フロイトが提唱した概念です。「死の本能」と訳されたりもします。 今回は、この「死の欲動」の考えに基づきながら、降谷さんを分析してみたいと思い…

【心理】降谷零は人を殺したことがあるか

ずっと気になっていることの1つです。 組織では「情報屋」という扱いのようですし、ウィスキートリオで行動していたときにはスナイパーが2人付いている(コナンくんの推理が正しかったとしてですが)ので、殺さないことは可能なのかもしれません…。が、ス…

【心理】降谷さんはなぜ赤井秀一の姿になったのか③

①と②をふまえ、降谷さんが赤井さんの死亡を確かめるために、赤井さんに変装した意味を考察します。 まず、誰もが疑わなかった赤井さんの死を、たった一人、降谷さんが信じなかったのは、もちろん「赤井秀一の能力を考えれば、あのような状況で死ぬのは不自然…

【心理】降谷さんはなぜ赤井秀一の姿になったのか②

「火傷赤井」さんの件の続きです。 前回、 降谷さんの謎の変装には、次の2つの要素が関わっているということを書きました。 ①降谷さんが赤井さんを(バーボンがライを)嫌っていたこと。 ②景光さんの件。 今回は、②の方を詳しく考察します。 景光さんの死は…

【心理】降谷さんはなぜ赤井秀一の姿になったのか①

いわゆる「火傷赤井」さんの件です。 メタ的に見れば、読者に「赤井秀一は生きていた!?」という謎を深める作用をする行動だったと思うのですが、それを差し引いて考えても、この行動が降谷さんの赤井さんに対するたいへん複雑な心情を端的に現しているよう…

【心理】「赤井秀一」という男

たまに思います。沖矢昴とは何者なのか。 赤井さんですね。赤井さんです。が、あまりにも…誰?(ベルモット風) ふしぎ沖矢さんはさておき、赤井秀一という人は、ものすごく魅力的な人物として描かれています。頭脳も肉体も、ハイスペックだらけのコナン界で…

【心理・所感】降谷さんにとって愛とは何か〜「愛の力は偉大だな」

「愛の力は偉大だな」。 「ゼロの執行人」の中で、私が最も「降谷零という人間」を感じた台詞がこれでした。 同時に、「ああ、ゼロの執行人の裏テーマは、愛だったのか」とも。 もしもこの台詞がなかったなら、私は降谷さんを「公共の利益を守るため、やむな…

【心理】降谷零の精神構造②景光・チャムシップ

「高明にいちゃん!ボク、東京で友達ができたよ!アダ名がゼロっていうんだ、かっこいいでしょ」 あの諸伏高明氏に、弟から「にいちゃん」とフランクに呼ばれていた時代があったことにもびっくりですが(深窓の令息ひとりっこ系かと)、その子が…降谷さんと……